再生医療現場レポート
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APS療法は、どんな人に向いていますか?
これまで変形性膝関節症の治療では、鎮痛薬やヒアルロン酸注射、運動療法といった保存療法(手術以外の方法)が効かなくなると、次の選択肢は手術療法しかありませんでした。手術療法で代表的なものには骨切り術や人工膝関節置換術などがあり、患者さんの症状や年齢、ライフスタイルなどをよく話し合った上で決定しますが、さまざまな事情や抵抗感からなかなか手術を決断できない方もいらっしゃいます。
APS療法は、保存療法が効かなくなり、主治医からそろそろ手術を考えたほうが良いと言われているとか、ご自身でもそう感じているけれども、まだ手術には踏み切れないという場合に、鎮痛薬やヒアルロン酸注射とは別の再生医療というアプローチで、改善が期待できる治療法です。最近は、手術が必要なタイミングだけれども、仕事やご家族の介護があって、今、手術で入院することはどうしてもできない、けれども痛みが辛いという場合に、手術の時期を先延ばしにできればという期待を持ってAPS療法を検討される方もいます。APS療法の流れ
どのようなタイミングでAPS療法を検討される方が多いですか?一般的には手術の前の段階で検討されるケースが多いですが、軟骨が完全にすり減ってしまう前のほうが、より効果が期待できると思います。一方で、軟骨のすり減りがかなり進行し変形がひどく曲げ伸ばしが難しくなっていたりするような場合は、早めに人工膝関節置換術などの手術を決断されたほうが良いケースもあります。それは、膝の痛みでまったく歩けないとか動けない状態にまでなってしまうと、膝周りの筋力が落ち、骨も弱くなってしまい、せっかく手術を受けてもその効果が十分に得られないことがあるからです。
どの治療にも効果を得るための適切なタイミングがあるので、整形外科を受診してよく相談することをお勧めします。変形性膝関節症5段階
APS療法を受ければ、手術を受けなくてすむのですか?APS療法は、確かに再生医療という枠組の中にある治療法ですが、残念なことに、すり減ってしまった軟骨が元通りになるわけではないのです。あくまでも軟骨のすり減りによって起きている炎症などの症状を和らげる可能性のある治療だと捉えてください。
ただ、APS療法で症状の改善を目指すことの意味は大きいと思います。それは、どうしても膝が痛いと動かなくなるので体重が増え、太ると膝にいっそう負担がかかり変形性膝関節症が進行してしまうという悪循環に陥ってしまうからです。膝の痛みが和らげば、膝関節周囲の筋力トレーニングもできます。また、減量は、一部、変形性膝関節症の進行予防になるともいわれているので、太っている人は膝の症状をなんとか改善して、運動できる状態をつくりだすのはとても大切なことなのです。APS療法は誰でも受けられるのでしょうか?APS療法は、悪性腫瘍(がん)の治療中や血液疾患がある場合などを除いて、ほとんどの方が受けられます。年齢制限もないので、体力的に手術を受けるのが難しい高齢の方には、APS療法のほうが向いているケースもあります。ただし、糖尿病がある場合は、先に糖尿病治療を行っていただく必要があります。血糖値がコントロールできている状態であれば、糖尿病でも受けられます。この病気は体重コントロールが必要な場合もありますから、手術に踏み切れず痛みが続いているようであれば、APS療法を選択肢の1つとして検討されるのも良いかもしれません。
・医療機関によって、治療を受けられる患者さんの基準が異なる場合があります。詳細は受診先の医師にご相談ください。
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