再生医療現場レポート
-
話題の再生医療。整形外科領域においても、様々な再生医療があり注目を浴びています。今回は、患者さんご自身の血液から作成する再生医療のPRP(多血小板血漿)療法とAPS(自己タンパク質溶液)療法について、あたご整形外科 理事長の佐藤信博先生にお話を伺いました。PRP(Platelet Rich Plasma;多血小板血漿)療法とAPS(Autologous Protein Solution;自己タンパク質溶液)療法とはどういう治療ですか?治療の流れ
PRP療法、APS療法ともに患者さんご自身の血液をもとに治療するのですが、血液は赤血球、白血球、血小板などで構成されます。PRPには血小板が多量に含まれているのですが、血小板の働きには「血液を固める働き」以外に「組織の修復を促す成長因子を出す働き」があります。PRP療法は、この血小板の働きを利用し患部に注入することで、細胞の修復力を促進する治療です。一方APS療法は、PRPから更に炎症を抑えるタンパク質と成長因子など関節の健康に関わる成分を高濃度に取り出したもので、これを直接患部に注射し、患者さん自身の修復能力や炎症を抑える力などを引き出そうとする治療法になります。具体的には、静脈から血液を55cc採血し1回遠心分離機にかけると6cc程度のPRPが作成されます。そのPRPをもう一度遠心分離機にかけるとAPSが約2.5cc精製され、それぞれを患部に注射します。
PRP療法とAPS療法では、治療する分野は違うのですか?PRP療法は、肘やアキレス腱など腱や靱帯の炎症や損傷の治療で使われることがあります。海外では、アスリートなどの間で10年以上前から利用されています。
APS療法は、膝関節などの変形性関節症に対して痛みや炎症を改善させることを目的として治療が行われています。変形性関節症になると、関節内に炎症性サイトカインという炎症を起こすタンパク質が作られます。このたんぱく質には軟骨を破壊する成分が含まれているので、軟骨が少しずつ破壊されてしまいます。しかしAPS療法は、炎症を抑えるたんぱく質と軟骨などが良い状態を維持できる成長因子をたくさん含んだものを患部に投入するので、炎症を引き起こすタンパク質の活動を阻害することで、炎症を抑え軟骨の破壊を抑制することが期待されています。抗炎症サイトカインなどの成長因子
安全性や治療を受けられない人はいますか?再生医療は、厚生労働省が定める再生医療等安全性確保法(再生医療等の安全性の確保等に関する法律)で、リスクに応じて第1種、第2種、第3種と3段階に分けられており、リスクに応じた再生医療等の提供計画を厚生労働大臣に提出することが義務化されています。PRP療法は第3種に、関節のみに行うAPS療法は第2種となっており、届け出が受理された一定基準の安全性が確保された医療機関でのみ治療が行えることになっています。また、PRP療法、APS療法ともにご自身の血液を使用するので、副作用などのリスクは極めて低いと思います。
PRP療法、APS療法は、年齢制限はありませんので、高齢の方でも治療を受けることが可能です。ただし、がんやリウマチ、膠原病などで治療中の方や重篤な合併症(心疾患、肺疾患など)などがある方の場合は治療ができないことがあります。また、消炎鎮痛剤などの痛み止めを服用している場合、治療の1週間前から服用を中止いただく場合があるので、治療を検討している方は、ご自身がPRP療法、APS療法を受けることができるか治療を受ける医師にご確認するようにしてください。※厚生労働省「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」概要資料をもとに関節ライフが作成
この記事が気に入ったら
いいね ! しよう