再生医療現場レポート
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CHAPTER 01変形性膝関節症で痛みの緩和が期待できるAPS療法とは
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CHAPTER 02ご自身の血液を用い治療する、再生医療APS
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CHAPTER 03自分でしっかり歩ける足を保ち、活動量を低下させないことが重要
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APS療法とは、具体的にどんな治療法でしょうか?
APS(Autologous Protein Solution(自己タンパク質溶液))は、簡単にいうと、関節内で炎症を起こすタンパク質(炎症性サイトカイン)の働きを抑えるため、炎症を抑制するタンパク質(抗炎症性サイトカイン)を中和剤として注入します。APSには、軟骨の健康を守る成長因子も高濃度に含まれているので、痛みの軽減だけでなく軟骨のすり減りを防ぐことも期待されています。具体的なAPSの治療方法は、治療当日に患者さんから約50mlの血液を採血し、遠心分離機にかけるなど特別な加工を加えて、約2.5mlのAPSを取り出し、患者さんの膝関節に注射します。病院に来てから1~2時間程度で完結する治療法で、入院の必要はなく、治療後はご自身で歩いて帰宅できます。ヒアルロン酸注射を受けたことがある人も多いと思いますが、感覚としてはそれに近いものになります。
APS治療の流れ
どんな人がAPS療法に適していますか?膝関節の場合、変形の度合いがグレード0(正常な状態)からグレードⅣ(末期)の5段階に分けられますが、その中でグレード2、3の中程度までの患者さんで効果を期待しやすいといわれています。
基本的には、十分な保存療法を行いながらもどうしても痛みが取れないという場合に、日常生活動作の低下が進み、筋力が落ちてさらに症状が悪化するという悪循環に陥る前に受けるのが望ましいでしょう。または、内科的な疾患があり手術ができない人、家庭の事情があり入院で家を空けられない人にも適していると考えられます。APS療法を検討するもうひとつのタイミングは、本人の生活への希望と痛みによる制限のバランスが崩れてきたときです。日常生活は何とか送れるものの、趣味や旅行が思うようにならずつらい、本当はもっといろいろやりたいと考える人であれば試してみてよい治療法だと思います。APS療法は安全な治療法といえますか?ヒアルロン酸注射
APS療法は、厚生労働省に対する再生医療法に基づく届出が受理された施設だけが行える治療法です。届出が受理されるためには、採血した血液を安全に処理・加工できるよう、ほこりや菌が混入しない加工室を設けることも必須となっています。一定基準の安全性の担保が国から認められているというのは、患者さんにとって一つの安心材料になるのではないかと思います。また、APS療法は患者さん自身の血液を使った治療法であるので、副作用が起きにくいです。
ヒアルロン酸注射は1~2週間に一度など繰り返し受けている人もいますが、APS療法では一度の治療で1~2年程度の持続性が期待できます。どちらの治療も関節内に針を刺すことで、わずかながら感染のリスクがありますが、何度も繰り返し注射せずにすむというのが、APS療法のメリットです。効果の表れ方はいかがですか?VAS(Visual Analogue Scale)
個人差が非常に大きいので一概には言えませんが、治療1週間後の検診までには痛みの緩和を感じる患者さんが多い印象を受けます。一方で、もっと長期間かけて徐々に痛みが和らいでくる人もいて、変化を感じるのが1カ月後、あるいは3カ月後ということもあります。すぐに効果を得られなくても、治療半年後までは様子を見た方がよいでしょう。痛みの改善度合いについては、痛みの強さを示すVAS(Visual Analogue Scale)による評価で、平均で8割強の改善が報告されています。VASでは痛みがない状態を0、想像できる最大の痛みを10として表し、3以下が我慢できる程度の痛みといわれます。これも個人差が大きいものの、当初6~7あった痛みが2~3まで落ち着いたという例はよく見られます。非常に良い結果を得られた人では、8あった痛みが0になったというケースもあります。
ただし、重要なのが一定割合で効果を実感できない人もいるという点です。保険適用外の自由診療であり、費用も高額となるだけに、それを理解した上で治療を受ける必要があります。この記事が気に入ったら
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