再生医療現場レポート
エリア
東京都
膝関節の変形性関節症に新たな治療選択肢
ご自身の血液を使ったAPS療法とは
東京医療センター
人工関節センター センター長
ドクタープロフィール
専門領域:股関節、人工関節手術、骨粗鬆症
専門医等:日本整形外科学会専門医
東京医療センター
人工関節センター 副センター長
ドクタープロフィール
専門領域:膝関節、人工関節手術
専門医等:日本整形外科学会専門医
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APS療法を検討したほうが良いタイミングはありますか?
KL分類
金田 今まで行ってきた保存療法の効果が少なくなり改善が見られない場合や、日常生活での活動が制限されたり、痛みが強く出てるなどの症状が強くなったときがタイミングの一つだと考えられています。
膝関節の場合、変形性関節症の重症度を4段階に分けたKL分類があります。APS療法の効果が期待できるのは、軟骨が完全にすり減る前のグレードⅠ~Ⅱが良いと言われています。ただし、実際に治療を希望される方の中には病状が進行したグレードⅢ~Ⅳの患者さんもおられますが、すでに変形が進んでしまっていると効果は限定的になるかもしれません。効果があってもそれが持続し続けるわけではないため、将来的には手術の可能性というのも視野に入れる必要があると思います。APS療法を受ける際の注意点について教えてください藤田 治療前の注意点として、ヒアルロン酸注射との併用を避けたほうが良いと思います。ヒアルロン酸と混合されることで効果が発揮しにくくなる可能性があるので、ヒアルロン酸注射を受けていた方はおよそ1週間空けてから施術します。治療当日は注射した部分から細菌が入り感染しないよう入浴を避けるようにします。
APS療法後は炎症を抑える意味でも、膝に負担のかかる激しい運動は行わないようにしましょう。また、血小板の成分を関節内に注射するので、血小板の働きを抑制する作用のある消炎鎮痛剤の使用は避けてください。金田 APS療法は、血小板を集めた治療になるので、血小板が少ない方や血液疾患のある方は治療ができないことがあります。また糖尿病のコントロールの悪い方は、感染症のリスクが高くなるため注意が必要です。そのためにも治療前に血液検査を行い、治療が可能かどうか見極める必要があります。安全性については一般的な薬物療法とは違い、ご自身の血液を使う治療になるので、過剰なアレルギー反応が起こる心配はほとんどありません。副作用として、注射した患部に痛みや腫れなどが一時的に生じることがあります。
APS療法を受けた後はどのくらいで効果があらわれますか?金田 注射をして1~2日は痛みや腫れなどが見られることがあります。炎症のバランスが調整される過程で一時的に生じるもので、その間は激しい運動などは避け、冷やすようにして、無理をしないようにします。
その後、早い方だと施術後1週間くらい、平均的には施術後3週間くらいから効果を実感することがあります。患者さんによって感じる効果は異なりますが、階段の昇り降りなどの動作を痛みを気にせず行えるようになったという方が多くおられます。日常生活のちょっとした動作で改善を感じるようです。藤田 効果の持続に関しては、文献上では約2~3年続くという報告があります。効果ということでは、個人によってAPS療法の効き方の違いがあります。例えば、炎症に加えて半月板(はんげつばん)という組織が損傷し、関節内で引っかかりが生じているケースでは、APS療法によって炎症を抑えることができたとしても半月板の物理的な引っかかりは改善されないため、症状がとれにくいという可能性が考えられます。ですので、どのような方でも効果があるとは限りません。関節の状態によって効果の有無や持続期間に個人差がありますから、そういう可能性も十分に理解したうえで、ご自身が納得した治療を受けてほしいと思います。
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