再生医療現場レポート
クリニックや病院で受けられる整形外科の「再生医療」とは?
ドクタープロフィール
博士(医学)(大阪医科大学)。2002年~2004年米国ピッツバーグ大学に留学。整形外科再生医療の研究に従事。2011年4月、東大阪荒本で開業。医療法人再生会そばじまクリニックの院長として一般診療・地域医療に従事する傍ら、大学院非常勤講師として在籍、骨・軟骨の再生医療の研究中。
北米脊椎外科学会会員(NASS:North
American Spine
Society)、日本整形外科学会認定医、日本医師会認定産業医、日本整形外科学会スポーツ医、日本整形外科学会脊椎脊髄病医、日本整形外科学会リウマチ医、日本リハビリテーション医学会臨床認定医、日本整形外科学会運動器リハビリテーション医、日本リウマチ学会専門医、日本抗加齢学会専門医、日本再生医療学会
代議員
エリア
大阪府
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CHAPTER 01体性幹細胞と血液(多血小板血漿)
による再生医療が注目されている -
CHAPTER 02PRP(多血小板血漿)療法の可能性
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CHAPTER 03再生医療は、標準治療に加わった新たな選択肢
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PRP療法は、実際にどのような患者さんが受けているのですか?
靱帯損傷
当院では、これまでの標準治療では症状が改善しなかった整形外科のケガや疾患のすべてを対象として行っています。例えば、アスリートやプロのスポーツ選手の肉離れや靭帯損傷、打撲などのケガにPRP療法を用います。また、最近増えているのが、変形性膝関節症のひざの痛みの改善です。ヒアルロン酸やステロイド剤注射といった標準治療を続けてきたけれど改善せず、PRP療法を行ったら、かなり痛みが改善したという方もいます。また、部活動でスポーツをしている高校生が、ステロイド剤を使わない治療を希望されて親御さんと一緒にPRP療法を受けに来られたケースもあります。
基本的にPRP療法は、自分の血液の血小板をそのまま使いますので、血栓治療のために抗血小板薬を服用しているといった特殊な場合を除いては、高齢の方でも小さなお子さんでも受けることができる治療法です。これまでのご経験上、PRP療法では、どのような改善が期待できるのでしょうか?遠心分離機で成分を採り出す。
今、確認できていることは、スポーツ選手のケガの治療に対しては、PRP療法を使ったほうが治っていく過程に早く乗りやすいということです。さらに、血小板には、抗炎症作用を持つ成長因子も存在しているため、変形性膝関節症や肩腱板断裂の痛みや、痛みの原因となる炎症に対しても、改善が期待できると思います。
関節などの痛みについては、ヒアルロン酸やステロイド剤の注射があります。しかし、特にステロイド剤については、正常な組織を傷めるおそれがあることから、同じ部位への繰り返しの使用ができないというデメリットがあります。
自分の血液を使うPRP療法では、そのような問題が起こることはまず考えられませんので、投与頻度や期間の制限もありません。ステロイド剤に比べてリスクが少ないことから、特に、炎症を繰り返してしまう関節リウマチや変形性膝関節症の滑膜炎、スポーツ選手などの痛みの改善にPRP療法は新たな選択肢として期待できる治療法だと思います。
ただし、PRP療法だけで改善するわけではなく、変形性膝関節症であれば、ダイエットや筋肉をつけるなどの地道な治療によって関節を保護していくことも必要です。スポーツ選手なら、ケガの原因になっているからだの使い方のクセにも同時にアプローチする必要があります。
PRP療法は、人間が本来持っている「治る力」を押し上げるために用いる側面もありますから、患者さん自身が持っている「治る力」を見極め、全体像を見ながら治療していく必要があります。
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