再生医療現場レポート
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整形外科領域においてもさまざまな再生医療が行われるようになってきました。ケガからの早期回復や関節の痛みの軽減が期待されている再生医療。今回は、注目されているPRP(多血小板血漿)療法を更に進化させた、APS(自己タンパク質溶液)療法について、回生病院 整形外科 統括部長の衣笠 清人 先生にお話を伺いました。
再生医療とはどんな治療ですか?再生医療にはさまざまな種類があり、ヒトの胚(受精卵)から培養してつくるES細胞(胚性幹細胞)、人工的に作製するiPS細胞(人工多能性幹細胞)、体内にある体性幹細胞を使って体の組織や臓器を修復再生する研究が進められています。これらの方法を用いた治療はすでに始まっていますが、様々な克服しなければならない課題があり、今後の研究に期待が高まっています。
整形外科では、血液中の血小板に含まれるサイトカインなどの成長因子の力を利用するPRP療法・APS療法などの再生医療が行われています。キズついた組織を再生しようとする力を強くしたり、人が持っている自然に治そうとする力、自然治癒力を利用するなど人がもともと持っている力を利用する治療です。
PRP(Platelet Rich Plasma)療法は、自分の血液から血小板を多く含むPRP(多血小板血漿)を抽出し、患部に直接注射して治癒を促す治療です。海外では、2000年頃からプロ野球選手やアスリートがじん帯や腱、軟骨を損傷した際にPRP療法を用いた治療が行われ始め、徐々に知られるようになりました。
当院では、PRPからさらに関節の健康に寄与するAPS(自己タンパク質溶液)を取り出して注射する、APS療法を主として行っています。再生医療は、安全なのでしょうか?再生医療は、厚生労働省が定める再生医療法(再生医療等の安全性の確保等に関する法律)により、リスクに応じて1種、2種、3種と3段階に分けられています。
PRP療法・APS療法は、採取した自己血液を特殊なキットを使って遠心分離機にかけ、取り出したPRPおよびAPSを注射器で体内に戻す治療です。関節外に行うPRP療法は第3種に、関節のみに行うAPS療法は第2種に分類されています。
2014年から、他の再生医療と同様にPRP療法も再生医療法のもとで行わなければならなくなりました。そのためPRP療法・APS療法を含め、再生医療を行うには種別ごとに厚生労働省への届出が必要になりました。血液から血漿を採取する際のキットや加工施設にも厳しい安全基準が設けられており、施術の手順も細かく決められています。それらをクリアし、認可を受けた医療施設でのみで行われます。※厚生労働省「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」 概要資料をもとに関節ライフが作成
費用はどれくらいかかりますか?「PRP療法」や「APS療法」は保険適用外となり、全額自己負担となります。料金については、医療機関によって異なりますので、それぞれの施設にご確認ください。
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