再生医療現場レポート
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変形性膝関節症の場合、再生医療は利用できますか?
変形性膝関節症は、運動や重労働による膝の使い過ぎや、加齢に伴って膝と骨との間でクッションの役割をしている軟骨がすり減り、痛みを生じる病気です。ひどくなると骨同士がこすれ合って痛みがより強くなり、膝が変形して歩行が困難になることがあります。
変形性膝関節症の場合、PRPからさらにAPS(Autologous Protein Solution)を取り出し、関節内に注射するAPS療法を行っています。
APSとは、抗炎症サイトカインなどの成長因子が含まれた自己タンパク質溶液で、膝軟骨の炎症や劣化を引き起こす炎症性サイトカインの攻撃をブロックする作用があります。抗炎症作用の働きにより、関節内の炎症性物質と抗炎症性物質のバランスを整えることで膝軟骨の炎症を鎮め、損傷部に生じる痛みの軽減が期待されています。
欧州での開始後2年間のデータが公開されており、1回のAPS投与後から徐々に痛みがなくなり、多くの人が2年間痛みなく過ごせたという報告もあります。
日本では、2018年8月より国に届け出が受理された医療機関でAPS療法が受けられるようになっています。具体的な治療の内容を教えてくださいまず、患者さんから血液55mlを採取して、特殊なキットに入れて15分間遠心分離機にかけ、6mlのPRPを取り出します。それを別の特殊キットに入れて2分間遠心分離機にかけ、2.5mlのAPSを抽出し、患者の膝関節内に注射して完了です。採血から注射をするまでの所要時間は30分ほど、1回だけの治療で済みます。
どんな患者さんが対象と考えられますか?変形性膝関節症の人の場合、軽度~中程度の患者さんが対象になると思います。年齢に制限はありませんが、レントゲンで見て、膝の骨の状態がさほど悪くないのに痛みがあり、変形がやや進行しているが手術をしたくない人だと思います。膝の痛みをかばいながら生活すると、股関節や足首など他の関節にも支障が出てくることもあります。痛みがあるものの、まだ手術するほどではない段階であれば、APS療法は痛みを軽減する可能性のある手段の1つだと思います。
ご自身ができる方法として、痛み止め薬を効果的に使用し、痛みを抑制しながら正しい姿勢で歩き、筋肉アップのトレーニングをしたり、過体重の人はダイエットを並行して行うことで、変形性膝関節症の悪化を防ぐことができることがあります。
ただし骨同士が当たるほど軟骨がすり減っている人や、骨が変形して傾き、O脚が進んでいる人は、骨切りや人工関節置換術など、物理的に骨の形を整えたり、人工の物に置き換える手術が必要になります。変形性膝関節症5段階
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