再生医療現場レポート
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CHAPTER 01患者さん自身の血液を使った再生医療とは
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CHAPTER 02適切な治療へ進むためにご自身の状態をよく知ることが大切
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CHAPTER 03APS療法で期待できる効果と治療後の過ごしかた
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APS療法を受けると良いタイミングはありますか?
膝関節に変形が生じる変形性膝関節症では、症状の進行具合によって5段階に分けられますが、APS療法が日本で普及してきた当初は、グレード3、4など変形が進んで強い痛みがあり、従来なら人工関節の手術も検討すべき患者さんが主な対象と考えられていました。保存療法と手術の間を埋めるのがAPS療法という位置づけです。
しかし最近では、グレード1、2など比較的軽度な方が、症状の進行を予防する目的で選ぶケースも増えてきています。人工関節の手術とは異なり、APS療法はあまりに若い人には向かない、症状が初期だから早すぎるなどということもありません。保存治療のために、毎週・隔週など通院するのが難しいので、APS療法を試してみたいという患者さんもいます。
ただし、PRP療法と同様に保険適用外の自由診療(全額自己負担)でその費用も医療機関によって異なるということもあり、いつ治療を受けるかは患者さんそれぞれの価値観によるといえるでしょう。中には、すでにかなり変形が進んでいる状況で、「手術に受ける前の最後のチャンスとして挑戦してみたい」と治療に踏み切った方もいました。医師とよく相談し、ご自身が納得できるタイミングで受けていただきたいと思います。変形性膝関節症5段階
治療を受ける前に知っておいたほうが良いことはありますか?「万能の治療ではない」というのが大切な点です。APS療法は、変形性膝関節症のグレード2、3の患者さんで、7割の方に効果が認められたという海外の研究結果が出ています。ただし、前述の通り効果は患者さんそれぞれのため、治療を受けたすべての方が痛みを解消できるわけではありません。
両脚とも変形性膝関節症の患者さんでは、しばしば両膝同時にAPS療法を受けたいとおっしゃる方がいます。しかし、先述のような理由から治療はできるだけ片膝ずつ行うことをお勧めしています。両膝同時に受けるとそのぶん費用負担が大きくなるため、まずは片側で治療を行い、痛みが和らぐようなら反対側も検討すると良いでしょう。
なお、リウマチに代表される膠原病にはPRP療法・APS療法は効果がみられず、リウマチが疑われる所見があれば、まず先にその確認が欠かせません。血液を使った治療のため、癌の治療中の方も避けるべきとされています。糖尿病の方や、全身状態が悪い方も、免疫力が低下して感染リスクが高くなるため、医師とよく相談して慎重に治療法の選択を行いましょう。治療当日までの過ごしかたで気を付けることはありますか?ヒアルロン酸注射
膝関節の痛みで日頃から消炎鎮痛剤を服用している方は、治療前にはいったんそれを中止する必要があります。非ステロイド性抗炎症薬と呼ばれるタイプの痛み止めは、血小板の作用に影響する可能性があるためです。また、ヒアルロン酸注射もAPS療法の前には受けないようにします。ヒアルロン酸注射は、注入後1週間程度は関節内にその成分が留まります。APS療法にあたっては、関節内に他に何もない状態で受けることが望ましいとされています。
なお、APS療法は採血から注入まで即日で終わりますが、事前に診察を受けて、詳しい説明を聞き、日を改めて治療に臨むのが一般的です。ただし、遠方からの患者さんで何度も来院するのが難しい場合などは、初診時に対応できるケースもありますので、受診する予定の医療機関に前もって相談してみましょう。
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