再生医療現場レポート
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APS療法とPRP療法は何が違うのですか?
PRP(多血小板血漿)療法は、患者さんの血液に含まれる血小板が持つ組織修復能力を利用し、治る力を高め治癒を目指す方法です。治療は患者さんから採血した血液を遠心分離器にかけ、筋肉や腱、靭帯などの患部に注入します。このPRPをさらに分離処理し、抗炎症成分など関節の健康に関わる成分を取り出したものがAPS(自己タンパク質溶液)です。APS療法は、PRPに比べて抗炎症成分を多く含むため、変形性関節症の炎症を抑え、痛みが軽減されることが期待されています。
APS療法の流れ
どのような患者さんにAPS療法が期待されるでしょうか?保存療法を行ってきたけど症状が改善しない方、手術適応になっているが手術に踏み切れない方、手術を受けたくても家庭環境や社会的背景などの諸事情ですぐには受けられない方などは、APS療法を選択肢の一つとして考えてみてもいいのではないでしょうか。一般的に膝関節の変形があまり重度でない方であれば効果が期待されるといわれます。最近の発表では、変形が重度の方にも効果が見られたことが報告されていますが、今後更なる研究が必要だと思います。ただし、変形の程度などに関わらず、効果には個人差があり、治療を受けた方すべての症状が改善するというわけではありませんので、専門医とよく相談し納得した上で治療を受けることをお勧めします。
APS療法の安全性や気を付けることはありますか?APS療法は、患者さん自身の血液を使うので比較的安全性の高い再生医療と言えます。さらに「再生医療法(再生医療等の安全性確保等に関する法律)」という法律のもと、厚生労働省に届出が受理された施設のみで行うことができます。
治療を行う前には、「全身状態の確認」や「治療を受けられない禁忌疾患がないか」「感染性疾患がないか」などをチェックします。しかし、採血時や注入時の注射による感染の危険性がありますが、ステロイドやヒアルロン酸の関節内注射と同程度のものです。ただし、APS療法は現在のところ自由診療であり、費用は全額自己負担となります。各医療機関によって費用は異なりますが、決して安価な治療ではありません。また再生医療と呼ばれていますが、あくまでも炎症を抑える効果が期待されている治療であり、軟骨が再生して元の膝に戻るようなものではありません。人によっては期待したほどの効果が得られないこともありますので、治療を受ける前に担当医とよく相談し、ご自身が納得された上で治療を受けたほうが良いと思います。
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