再生医療現場レポート
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CHAPTER 01加齢とともに増える膝の痛み。原因と治療方法は?
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CHAPTER 02PRP療法とAPS療法の違いと安全性
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CHAPTER 03APS療法の後も、膝の健康を考えた生活を続けましょう
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膝の痛みをがまんしたり、自己判断で治療するうちに、痛みが増したと話す患者さんが多くいます。とくに中高年に多い変形性膝関節症は、早めに専門医を受診することで、治療の選択肢が広がります。近年では整形外科の分野でも再生医療が行われるようになり、「今までの治療では効果が出ない、でも手術する勇気がない」という方の新たな選択肢として期待されています。今回は、変形性膝関節症に対する治療法やAPS療法について、豊田整形外科院長の川本高基先生にお話を伺いました。
50代頃から増え始める膝の痛みには、どんな原因がありますか?半月板(はんげつばん)損傷といったケガ由来の痛みもありますが、50代ぐらいから増え始めるのが「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」です。男性よりも女性に多いのが特徴で、多くの高齢者がこの疾患(しっかん)をかかえています。変形性膝関節症は、年齢とともに関節にある軟骨(なんこつ)がすり減り、骨と骨がぶつかり合うことで炎症(えんしょう)や痛みを生じる病気です。一般的には加齢や生活習慣、体重の増加、足の筋力低下などに伴って悪化しやすく、60~80代ぐらいになると日常生活に差しさわる痛みが出る場合もあります。
変形性膝関節症は、レントゲン検査で進行度をグレード評価できるので、重症度と痛みに合わせた治療を行っていきます。日本人の場合は、膝の内側の軟骨がすり減りやすく、そのためO 脚に変形する方が多くいらっしゃいます。膝に痛みを感じたら、専門医による早めの診断が大切です。変形性膝関節症は、どのような治療が行われますか?変形性膝関節症と診断された場合、主にグレードⅠ~Ⅲなどの方では、湿布や鎮痛剤を処方して、膝の痛みや炎症を抑える治療を続けます。それと同時に、体重を減らす、和式の生活を洋式に変えるといった生活改善や膝を支える太もも周りを中心に筋力トレーニングを行います。症状によっては潤滑油の役割を果たすヒアルロン酸を関節内に注射することも多くあります。このような保存的治療を3カ月~半年ほど続けても症状が改善されなかった場合は、人工関節(じんこうかんせつ)手術などの外科手術考えても良い目安です。ただし、重症度の高いグレードⅣだから即手術というわけでなく、「普段の買い物に行けなくなってきた」「みんなと同じペースで歩けない」といった、日常生活に支障が出るかどうかが大きな判断基準となります。
APS療法は、どのような方に期待されていますか?保存療法を続けても効果を感じなかったり、手術を受けたいと思っても、長期間入院すると家族の介護や仕事を休めない事情から手術を受け入れられない方、人工関節のような金属などの異物を体内に入れることに抵抗を感じる方や、手術に抵抗がある方も多くいらっしゃいます。このような「手術をしないで痛みを改善したい」という方に、APS療法が期待されています。
ただし高度に膝が変形した方がAPS療法を受け、効果が出たという報告はありますが、あまりにも変形が進行していると効果が期待しにくいので、変形が極端に進行する前に治療を受けることを検討したほうが良いでしょう。この記事が気に入ったら
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