再生医療現場レポート
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PRP療法とAPS療法とはどのような治療なのでしょうか?
まずPRP療法ですが、これは、患者さん自身の血液を遠心分離機にかけて濃縮し、血小板の濃度を高めたPRP(Platelet Rich Plasma:多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう))を患部に注射する方法です。血小板の中には組織の修復に関わる「成長因子(せいちょういんし)」という成分が豊富に含まれており、損傷した部分の治癒(ちゆ)を助ける効果があるのです。そのため、スポーツ選手などが靱帯損傷(じんたいそんしょう)や腱損傷(けんそんしょう)、肉離れなどした場合に、手術はしたくないけどできるだけ早く治したい治療として期待されています。
APS療法は、「次世代PRP」とも呼ばれている治療法で、PRPをさらに濃縮したAPS(Autologous Protein Solution:自己たんぱく質溶液)を関節内に注射する方法です。APSには多くの成長因子が含まれているほか、炎症を抑える働きのあるタンパク質「抗炎症性サイトカイン」も豊富に含んでいます。そのため、炎症を抑える効果が高く、炎症を抑制し関節内のバランスを整えることで傷みを軽減することが期待されています。APS療法の流れ
PRP療法、APS療法は、安全な治療なのでしょうか?いずれも患者自身の血液を加工し患部に注射する治療で、採血から注射するまでに要する時間は1時間ほどで、入院する必要はありません。治療後数日~1週間程度は痛みや違和感が出ることはあり、スポーツは2週間ぐらい控えたほうが良いですが、特に日常生活での制限はありません。ヒアルロン酸の関節内注射などと同様に、関節内に注射することでの合併症の危惧はありますが、一般的な薬物治療とは違い、自分の血液を使う治療なのでアレルギー反応が起きる心配が少ないです。
まだ新しい治療法ということもあり、現在は厚生労働省に届け出が受理された医療機関でしか受けることができないのですが、医療機関には治療内容を国に詳しく報告することが義務づけられているなど、国の管理下で治療が行われている面でも比較的安全性の高い治療といえると思います。治療後、どのような効果が期待されているのでしょうか?PRP、APSを注射した後、早い方なら1週間ほどで、平均的には1か月ぐらいで「痛みが軽減した」という効果を実感される方が多いですね。ただし効果には個人差があり、効果を感じない方もおられます。一般的には、症状がかなり進行した重度の方には効果が現れにくい傾向があるようですが、どのような状態の方により効果があらわれるかは、これから治療実績が蓄積にするにつれ、明らかになっていくと思われます。いずれにせよ、必ずしも期待通りに効果が出ないこともあるということはご理解いただきたいと思います。
効果があった方でも、必ずしも痛みがゼロになるわけではありません。気にならない程度に痛みが軽くなった、あるいは、動きやすくなったという実感を持つ人が多いですね。「気がつけば以前より歩くのが速くなっていた」とか、「散歩の距離が延びた」とか、「手すりを使わずに階段が降りられるようになった」というように、今まで痛みのせいでできなかったことが、いつの間にかできるようになったことで効果に気づくという方も少なくありません。治療効果は、PRPで約1年、APSで約3年続くという報告があります。
痛みが軽減しても適切にリハビリに取り組むことも大切です。運動療法を組み合わせて活動性を高めるのは、長期的によりよい効果を得るためにも重要だと思います。この記事が気に入ったら
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