再生医療現場レポート
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CHAPTER 01保存療法でも手術でもない、変形性膝関節症の新たな治療法とは
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CHAPTER 02血小板が持つ組織修復力を利用し、炎症にはたらきかけるAPS療法
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CHAPTER 03APS療法の流れや治療後の注意点、期待される効果について
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膝の痛みの主な原因として知られる変形性膝関節症。保存療法を続けてきたものの改善せず、それでもさまざまな事情から手術には踏み切れないという方は少なくありません。そうした中、近年新たな治療選択肢として注目されるのが、再生医療のひとつ、APS療法です。TMGあさか医療センターの飯田先生に、APS療法のメリットや注意すべき点、治療への向き合いかたなどを詳しく伺いました。
そもそも変形性膝関節症とはどのような病気ですか?変形性膝関節症
変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)は、加齢変化に伴って膝の軟骨がすり減り、骨の変形が進んでいく病気です。もともと膝痛の原因として多い病気ですが、患者さんの数が増え続けているのは平均寿命の伸長にも関係しています。80~90歳代まで自立した生活を送る方、活動的に暮らす方は少なくありません。一方で膝の軟骨は年齢とともに摩耗が進みますから、膝関節の寿命の方が先に尽きてしまうといった状態です。また、肥満のために膝関節への負担が増したり、骨粗しょう症に伴う骨の脆弱性から骨挫傷を生じたりして痛みが強まるケースが多いのも最近の傾向です。
軟骨のすり減り自体はある意味自然な現象なので、膝の痛みがなければそれは、その方の「年齢相応の健康な膝」と言えます。しかし、生活に差し障るような強い痛みを感じるのであれば、やはりそれを和らげられるよう適切に対処したほうが良く、早めに整形外科へ受診されることをお勧めします。膝に水が溜まるのですが、抜いたほうが良いのでしょうか?関節に水が溜まった状態には、急性と慢性2種類があります。突然、水が溜まって、そのために曲げると痛みがある、動きが制限されてつらい、などといった場合は抜いても良いと思います。一方、慢性的に溜まっていた不快な症状の原因とならないなら、積極的に抜くことは勧めていません。
そもそも膝に溜まる水は関節液(かんせつえき)と言い、関節の軟骨へ栄養を与えるために関節包(かんせつほう:関節を包む袋)の中を満たしている液体で、それ自体は正常なものです。軟骨のすり減りが、関節液をつくり出す滑膜(かつまく)を刺激し、炎症を起こすことで関節液が過剰に分泌されるのが「水が溜まった」状態です。慢性的に関節液の量が増えると、関節包もそれに合わせて大きくなり、抜いてもまた袋の大きさに見合った量の関節液が分泌され溜まります。これが俗に言う「膝の水は抜くとクセになる」など誤解される理由ですが、本来の原因が解決されない限り水が溜まる症状はなくなりません。変形性膝関節症の治療ではどのような方法がありますか?膝関節は、体重を支える関節です。まずは関節の支持性、安定性を高められるよう、膝周りの筋力を鍛えたり、筋肉を柔軟に保つためのストレッチなどの運動療法に取り組みます。当然、肥満の方は減量も大切です。歩行や階段の上り下りの際、膝関節には体重の3~5倍の負荷がかかりますから、少しでも体重を落とせばその分負担を減らせます。痛みが強ければ、日常生活の活動性低下を防ぐため痛み止めを飲んだり、湿布などを上手に活用します。また、ヒアルロン酸の関節内注射も痛みや炎症を抑えるのに有効です。
こうした保存療法を続けていても痛みが改善せず、「生活に支障があるのでもっと治療を進めたい」という患者さんは、これまでであれば外科的治療の検討が必要となります。手術法には、骨切り術と人工関節置換術(じんこうかんせつちかんじゅつ)があります。骨切り術は、比較的若い年齢で、関節の状態によって適応が絞られますから、一般的なのは人工膝関節置換術です。膝関節をすべて人工のものに置き換える全置換術、傷んだ部分だけを人工のものにする部分置換術があり、患者さんの膝の状態に合わせて選択します。人工膝関節置換術は、件数も多く成績の安定した治療法ではありますが、さまざまな事情から手術には踏み切れないという方はたくさんいます。そんな中、新たな選択肢となっているのが、人間の体が持つ自然治癒力を利用した再生医療のひとつ、APS(Autologous Protein Solution=自己タンパク質溶液)療法です。全置換術と部分置換術
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