再生医療現場レポート
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CHAPTER 01保存療法でも手術でもない、変形性膝関節症の新たな治療法とは
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CHAPTER 02血小板が持つ組織修復力を利用し、炎症にはたらきかけるAPS療法
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CHAPTER 03APS療法の流れや治療後の注意点、期待される効果について
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実際にAPS療法を受ける流れを教えてください
APS療法を受けることを決めたら、少なくとも1週間前からは血小板に影響するような一部の薬、主に消炎鎮痛剤ですが、中止する必要があります。その間、痛みがつらい場合は、治療に影響のない痛み止めに変更して服用するようにします。予約当日は、まず血液を採取します。その後、血液を特殊なチューブに入れて遠心分離をかけることでAPSを精製抽出します。採血から抽出に要する時間は1時間弱で、精製されたAPSを関節内に注入し、一連の治療が完了します。基本的には入院は必要なく、日帰りで受けられる治療です。APS療法を希望する患者さんは、ほぼみなさんヒアルロン酸注射を受けたことがあると思いますが、注射そのものはヒアルロン酸注射とほとんど同じ手順です。あまり過度に身構えることなく治療を受けていただけるかと思います。
治療後、生活の制限はありますか?治療当日の飲酒や、マッサージなど患部に刺激が加わるようなことは控えるようにします。そのほかは特に日常生活に制限はありませんが、1~2週間は激しい運動は控えていただきます。
人によっては、治療後に数日~1週間程度で痛みや腫れが出ることがあります。あくまで一時的なものであまり過度に心配する必要はありません。ただ、痛みが強くてつらければ、治療前と同様に血小板に影響のない痛み止めを服用します。気になるようであれば、我慢せずAPS療法を受けた医療機関に症状を伝え、相談してみましょう。効果はどのくらいであらわれ、どのくらい持続しますか?効果は患者さんによって差がありますが、治療後1~3カ月間程度で徐々に痛みが楽になってきたなど変化を感じる方が多いようです。3カ月~半年後程度まで様子をみて、治療効果を判定することになります。これまでの報告では、APS療法を受けた方の7割以上の方で痛みの改善が見られています。しかし、すべての方に必ず効くという治療法ではなく、治療を受けても効果を感じられない方が一定割合でいることを踏まえておかなければなりません。
効果の持続期間は、一般に1~2年程度とされています。持続期間を3年程度とする報告も出てきていますが、まだ新しい治療法のため、十分な検証データの蓄積が今後の課題といえます。治療後、症状が改善すればスポーツなどをしても良いですか?もちろんそのための治療です。APS療法を受けて症状が和らぎ、ご自身がもっと積極的に体を動かしたいと考えるのであれば、運動・スポーツに制限はありません。全身の健康のためにも積極的に運動を取り入れた生活を送っていただければと思います。ただし、長年膝の痛みに悩んでいた方は筋力が落ちていることが多く、一気に運動量を増やすのは避けたほうが無難です。突然負荷の高いスポーツを始めるのではなく、まずは易しいウォーキングなどからスタートして基礎的な体力を養い、段階を追って強度を高めていくよう努めてください。
APS療法を検討している方にメッセージをお願いします膝の痛みに悩んでいても、「できれば手術は受けたくない」というのが皆さんに共通する思いでしょう。手術は最後の手段として、できるだけそれ以外の方法を検討したいという多くの方に対し、APS療法は新たな治療選択肢となります。これまで保存療法で効果が得られなければ手術以外に十分な効果の期待できる治療法がなかった中、新たな治療の選択肢としてAPS療法が開発され、普及してきたことは、医師としても大変評価しています。
APS療法を受けられる施設は徐々に増えてきています。患者さんには、こうした新たな治療選択肢も視野に入れながら、信頼できる医師のもと、ご自身が納得のいく治療を進めていただきたいと思います。
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