再生医療現場レポート
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スポーツや趣味のゴルフやテニスを頑張りすぎて、筋肉や腱などに障害が出るオーバーユース症候群や、変形性膝・股関節症にはリハビリなどの保存療法が行われてきました。しかし保存療法を続けても治療効果がないと、手術しか選択肢がないのかと諦めていた方も多いのではないでしょうか。新たな治療法として期待される、ご自身の血液を使うPRP療法やAPS療法の詳細について増本整形外科クリニック院長の増本項先生にうかがいました。
PRP療法やAPS療法はどういう治療なのですか?PRP(多血小板血漿)療法イメージ
血液の中に含まれる血小板には、傷口を塞ぐ働きだけでなく、成長因子というたんぱく質が放出されて組織修復を促す働きもあるのです。PRP(多血小板血漿)療法は、この成長因子が多く含まれるので、傷ついた組織の治癒を促進する効果が期待されています。またAPS(自己タンパク質溶液)療法は、PRPよりも抗炎症性サイトカインを多く含むので、関節内の炎症バランスを整えることで、炎症や痛みを改善するとともに軟骨が破壊されるのを抑制することが期待されています。
再生医療と聞くと、傷ついた組織が元のように戻ったり、新しく生まれ変わるのではと思われるかもしれません。しかしPRPやAPS療法は、前述のように治癒能力を高める治療なので、傷んだ組織が新しく生まれ変わったり、レントゲンで分かるほど軟骨が修復したり、骨の変形が治ったりすることはないのです。どのような疾病の方がPRP療法の対象と考えられるのでしょうか?大きく分けると2つのタイプがあり、テニス肘やゴルフ肘などオーバーユースの方や、現在、外傷治療を続けているけれど効果があまりみられない方です。オーバーユースが原因の場合、通常はストレッチやアイシングなどの理学療法を少なくとも2ケ月行えば、ほとんどの方は症状が改善します。しかし発症後かなり時間が経過していると理学療法だけでは効果が期待しにくく、そのような場合はMRIで状態をしっかり確認した上で、PRP療法を提案することがあります。
PRP療法後2ケ月くらいたつと痛みや腫れが引き、腕や肘などの動きが改善することがあります。痛みが軽減すると治ったと思って、また使い過ぎてしまうのは再発の原因になります。再発しないように運動のやり方を見直したり、無理をし過ぎない、トレーンング後はストレッチをするなど、再発予防を意識し実践することがとても大切です。PRP療法はどのように行われるのですか?アイシング
患者さんの血液を採血し、それを遠心分離機にかけPRPが抽出できます。そのPRPを損傷した部位やその周辺組織に超音波で確認しながら注射しますので、治療にかかる時間は30分程度です。PRP療法を受ける前に食事制限など特別な制約や準備は必要なく、また入院の必要もありません。
ご自宅に戻られてからは、注射した部分が感染しないように当日の入浴は避けるようにしましょう。治療後、局所に強い痛みが出ることが多いので、その場合は繰り返し患部を冷やすようにしてください。日常生活程度の運動は問題ないですが、2週間程度はトレーニングを行ったり、たくさん歩いたり走ったりするなど激しい運動は避けるよう気を付けましょう。
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