再生医療現場レポート
-
CHAPTER 01保存療法では満足できなかった時に期待されるAPS療法
-
CHAPTER 02APS療法後の注意点と、筋力トレーニングを続ける効果
-
CHAPTER 03ご自身がしっかり理解し、納得した治療選択を
-
変形性膝関節症による膝の痛みに悩んでいる方は多いのですが、治療効果に満足していなくても、手術を受けたくないからと痛みを我慢されている方が多くいらっしゃいます。これまでは、保存療法だけでは症状の改善がみられない場合、手術という選択肢しかありませんでした。ところが、自分自身の血液を用いた新しい治療法として、APS療法が期待されています。長浜赤十字病院の石川正洋先生に、期待されるAPS療法の効果や注意すべき内容について詳しくお話しいただきました。
変形性膝関節症の保存療法に満足されていない方が多いのですか?現在、関節の変形の程度が軽い変形性膝関節症の患者さんに対しては、痛み止めやヒアルロン酸などの関節内注射といった薬物療法を中心とした保存療法が多く選択され、症状が改善される方もおられます。ところが、実際の臨床現場では、従来型の治療だけでは、十分に痛みのコントロールを行うことが難しい患者さんがたくさんおられ、あるアンケートでは、既存治療の痛みのコントロールに満足している患者さんが4割しかいないという報告もあります。
従来は、保存療法を続けても症状の改善が見られなかった場合は手術療法しかなく、治療効果に満足されていなくても手術を受けたくないからと痛みを我慢している方がたくさんおられました。しかし、従来の方法では膝の痛みが改善しなかった方に、新たな選択肢として加わったAPS治療が期待されています。変形性膝関節症5段階
PRP療法とAPS療法の違いや特徴について教えてくださいPRP療法は患者さんご本人から採血した血液を遠心分離機にかけ、抽出した血小板を多く含む血漿(けっしょう)であるPRPを取り出して、患部に注射する治療法です。血小板は出血した際に血管を修復する作用のある血球の一つであり、PRP療法は、この修復する力を利用したものです。最近ではプロスポーツ選手の治療に使われており、有名となっています。APS療法は、PRPからさらに特殊な脱水処理をすることによって、〔炎症を抑えるサイトカインや成長因子を高濃度に濃縮したもの〕を関節内に注入する治療法で、次世代型のPRP療法と言えるでしょう。
APS療法の流れ
APS療法は、関節内の「炎症」を抑えることが期待されているのでしょうか?正常な膝(左)と炎症のおきた膝(右)
変形性膝関節症の軟骨破壊は、特に初期から中期では関節内の「炎症」によって軟骨破壊が加速すると言われており、この「炎症」が痛みの原因の一つです。APS療法には「炎症」を抑えるサイトカインや成長因子が豊富に含まれており、また、PRPに比べて抗炎症成分を多く含むことから、「炎症」を抑え、より痛みを軽減させる効果が期待されています。実際に、変形性膝関節症に対する治療を比較した研究から、ヒアルロン酸注射よりも痛み、機能面で効果があったという結果が報告されています。
APS療法を考えたほうが良いタイミングはありますか?変形性膝関節症と診断された場合、まずはしっかり保存療法を行い、それでも満足できる効果が得られない場合は、次の治療選択肢としてAPS療法を考えてみても良いと思います。
APS療法を受けるタイミングとしては、比較的軟骨が壊れていない時期の患者さんですと、7割程度の方でその効果を実感いただけたという報告があります。
また、人工関節の手術が適応と考えられるような方が治療を受け、症状が改善したという報告もあります。しかし、軟骨がひどく壊れてしまうまで進行してしまうと、上記のような効果が十分に期待できないというような報告もありますので、APS療法は手術療法が対象となる前の段階でご検討いただくのが良いと考えます。ただし、治療を希望される場合は、担当の先生としっかりカウンセリングを行い、ご自身が納得されてから治療を受けることをお勧め致します。
この記事が気に入ったら
いいね ! しよう