肩は、膝関節や股関節のような常に体重がかかる関節ではないため、
変形性肩関節症(へんけいせいかたかんせつしょう)を発症する割合は高くはありません。しかし、
腱板損傷(けんばんそんしょう)や
脱臼(だっきゅう)などにより
関節軟骨(かんせつなんこつ)や
靭帯(じんたい)が傷つくと
変形性肩関節症を引き起こす危険性があります。
変形性肩関節症では、軟骨がすり減ったり骨が変形した結果、関節内やその周辺に痛みを感じるようになります。残念ながら、傷んだ軟骨は再生しないため、腕や肩を使う動作が困難になり、徐々に
変形性肩関節症が進行していきます。肩の
脱臼が原因で生じた変形性肩関節症では、
脱臼を繰り返すことにより症状がさらに悪化するため、早期に適切な治療を行うことが重要です。
初期症状としては、肩関節のこわばりや痛みが生じ、動きが制限されます。中期から末期になると関節内に
関節液が溜まったり、夜間に強い痛みを感じるようになります。
関節の痛みを伴う
変形性肩関節症は、関節の変形度を
エックス線検査などで確認して診断します。また、
変形性肩関節症は腱板の異常を伴うことも多いため、骨以外の軟部組織の状態を判別しやすい
MRI検査も有効です。初期の変形性肩関節症の場合は、
五十肩(肩関節周囲炎)などの疾患と鑑別が困難なこともあります。また、
関節リウマチや痛風などの他の病気が疑われる場合は、血液検査を行います。
初期の
変形性肩関節症には保存的治療(手術をしない治療)を行います。非ステロイド性消炎鎮痛剤(しょうえんちんつうざい)の服用や、関節内への注射などで痛みを緩和させます。また、温熱療法(おんねつりょうほう)や電気刺激療法(でんきしげきりょうほう)、関節を動かす練習(関節
可動域獲得訓練:かんせつかどういきかくとくくんれん)、肩のストレッチ、筋力強化訓練(きんりょくきょうかくんれん)などの運動療法(リハビリ)を適切に行うことにより、痛みを軽減させることが可能です。
保存的治療を継続的に行っても肩の痛みが改善しない場合や、肩の
可動域制限が大きく日常動作が困難な場合は、手術的治療が検討されます。初期の場合は
関節鏡(内視鏡)で関節内の病的な組織を切除すると痛みは軽減しますが、すでに変形が進行している場合には、人工肩関節置換術(じんこうかたかんせつちかんじゅつ)または人工肩骨頭挿入術(じんこうかたこっとうそうにゅうじゅつ)が適応となります。
・滑膜切除術(かつまくせつじょじゅつ)
関節内で増殖した
滑膜や傷んだ軟骨片などを切除する手術で、より低侵襲の
関節鏡での手術も可能
・人工肩関節置換術/人工肩骨頭挿入術
関節の痛みの原因であるすり減った
軟骨と傷んだ骨を切除して、金属やプラスチックでできた人工関節に置き換える手術。痛みと関節の動きの大きな改善が期待できます。